このコラムでは、子どもを暴力から守り、安心・安全を守る支援である「子どもの保護(Child Protection)」という分野を、さまざまな社会課題と掛け合わせながら、わかりやすくお伝えします。 子どもを取り巻く課題を知り、考え、行動につなげるきっかけになれば幸いです。他分野やセーブ・ザ・チルドレンの活動ともつながる場としてお届けします。
第一回のコラムはこちら:【子どもの保護コラム】いま世界が“体罰禁止”に向かう理由――4月30日「子どもへの体罰を終わらせる国際デー」に寄せて――
第二回となる今回は、子どもたちをインターネット上の危険やトラブルから守り、安心してオンラインの世界を楽しめるようにするための 「オンライン上の危険からの保護(オンライン・プロテクション)」を取り上げます。
こども家庭庁が2024年に実施した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、満10歳から17歳の青少年のうち98.2%が「インターネットを利用している」と回答しました。[1] そして、スマートフォンの使用状況に関しては、小学生の47.5%、中学生の83.6%、高校生の98.2%が利用していることが分かりました。[2]
便利で楽しいコンテンツが溢れる一方で、インターネット上には詐欺や誹謗中傷、不適切なコンテンツ、SNSを通じたトラブルなど、子どもにとってリスクとなる要素も多く存在します。下記の表の通り、オンラインにおける子どもに対する暴力にはさまざまな種類があります。
オンラインにおける子どもに対する暴力の種類と例[3]
オンライン上の子どもに対する暴力の種類 | 例 |
オンラインでの誘惑とグルーミング(親切を装って子どもに近づく行為) |
・性的な会話の要求 ・子どもを性的関係に誘導する行為 |
性的恐喝 |
・不同意、または強要による性的画像の要求 ・金銭や性的行為の強要 |
サイバーブリング(ネットいじめ) |
・脅しや誹謗中傷などの傷つけるメッセージ ・嘘や噂の拡散 |
サイバーストーキング |
・しつこい連絡 ・ブロックしても別のアカウント等から接触を続ける |
ハッキング |
・個人情報への不正アクセス ・SNSのなりすまし・改ざん |
実際、インターネットを使う青少年約3,000人を対象としたこども家庭庁の調査によると、「迷惑メッセージやメールが送られてきたことがある」と答えた割合が23.7%、「インターネットで知り合った人とメッセージやメールなどのやりとりをしたことがある」が18.1%に上りました。[4]
こうしたリスクから子どもを守るための「オンライン・プロテクション」は、世界中で取り組むべき重要な課題です。子どもたちをインターネット上の危険やトラブルから守り、安心してオンラインの世界を楽しめるようにするためには、周囲の大人だけでなく子どもたち自身が、オンラインにおける子どもの権利[5]を認識することが大切です。
● 自分らしさを伸ばし、能力を高めるためにインターネットを活用する権利
● 自分の個人情報やプライバシーを守る権利
● 年齢に適した形でオンラインの世界に参加し、楽しみ、情報を得る権利
● 自分の考えや気持ちを自由に表現し、尊重される権利(同時に他者を尊重する責任)
● インターネットで見聞きしたことを自らの考えで判断し、意見を交わす権利
● オンライン上で他人に不快な気持ちにさせられたら、はっきり「NO」と言う権利
子どもがオンライン上のリスクから守られ、ネットいじめや誹謗中傷の加害者・被害者にならないためにも、日常的な声かけやルール作りは大切です。ここでは、「周囲の大人ができる子どもをオンラインのリスクから守る8つのヒント」[7]をご紹介します。
悪意を持った人は、わずかな情報から子どもに関する情報を特定することができます。
● フルネームや正確な位置情報、生年月日は共有しない
● 迷ったら投稿しない
子どもの写真や情報をオンラインで共有する前に、本人の許可を取りましょう。子どもは、オンライン上に自分のどんな写真や情報を残すかを自分で選び、時には「NO」という大切さを学ぶことができます。
● 「この投稿で子どもが恥ずかしい思いや嫌な思いをしないか?」と自分自身にも問いかける
自分が投稿する内容から子どもに関する情報が特定されないように気を付けましょう。
● 学校名、校章や制服、通学路の標識が写っている写真は避ける
● 旅行や外出の予定、滞在先や不在期間など所在や移動の詳細が分かる情報は公開しない
ネット上で流行しているものや危険な兆候について常に最新情報を得るとともに、子どもに直接確認することが大切です。
● 学校で受けたオンラインの安全に関する授業・講演について聞く
● 子どもがどのサイトやアプリを使用しているか聞く
問題が起こる前から、リスクと対処法について早い段階で話すことが必要です。
● オンライン上のリスクについて、子どもの年齢や理解度に合った方法で伝える(例:低学年には「知らない人に住所を教えない」など具体的で短いルール、高学年には事例や背景も交えて説明する)
● 何かあったときに、子どもが安心して大人に伝えられるよう、あらかじめ伝え方の例を教える(例:「変なメッセージがきた」「ネットで嫌なことを言われた」「こんな画像を見せられたけど、どうしたらいいか分からない」)
子どもは周囲の大人の行動を真似します。大人がバランスの取れたオンライン習慣を持つことが、子どもの健全なオンライン上での過ごし方につながるでしょう。
● 自分のスクリーンタイムを減らす
● 食事中はスマホやタブレットを使用しない
● 子どもにふさわしくないゲームは、子どもの前でしない
子どもの生活習慣や周囲の人とのかかわり方にどのような影響があるか一緒に考えるために、以下のような質問が会話のきっかけになります。
● 普段使うアプリ、ゲーム、サイトはどんな気持ちにさせる?
● 睡眠・食事・運動のリズムに影響はある?
● オンライン上で過ごす時間は、家族や友達との関係にどんな良い/悪い影響がある?
子どもと一緒にルールを決め、それを自らも守ることが大切です。
● スクリーンタイムや利用できるサイト・アプリ・ゲームを決める
● スクリーンタイムが終わったら画面を消す
セーブ・ザ・チルドレンは、これからも子どもたちが安全にオンラインの世界を楽しみ、その可能性を最大限に伸ばせるよう取り組みを続けていきます。
<参考>
子ども自身がオンラインの危険から自分を守るためのヒントはこちら:
【10代必見】スマホ・SNSの危険から身を守る!ネット安全対策5つのコツ
[1]こども家庭庁 令和6年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書|こども家庭庁、2025年3月、p.19(2025年8月11日閲覧)
[2] 同上、p.22
[3]What works to prevent online violence against children? Geneva: World Health Organization; 2022(4ページ目の表を著者により翻訳・編集). License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO. https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/3.0/igo/
[4]こども家庭庁 令和6年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書|こども家庭庁、2025年3月、p.65(2025年8月11日閲覧)
[5]Guidelines for Children on Child Online Protection. International Telecommunication Union (ITU): 2009. P.39. Guidelines for Children on Child Online Protection - Save the Children’s Resource Centre
[6]CREATING A SAFE DIGITAL CHILDHOOD FOR ALL, Save the Children International(2025年8月11日閲覧)
[7]Guide: How to help children you know stay safe online | Save the Children International, Save the Children International(2025年8月11日閲覧)