紛争とは?その原因や子どもたちへの影響

皆さんは、紛争という言葉を聞いてどのような状況や状態を考えますか。

 

紛争とは、もともと何らかの争いや対立などの状況を指す、広い意味の言葉です。
武力や暴力を使わない争いも紛争と呼ばれることがあります。しかし、ここでは武力を伴う、いわゆる武力紛争についてご紹介します。

紛争に近い言葉として、戦争や内戦がありますが、戦争は国と国との武力を用いた争いを指します。内戦は1つの国の中での争いです。戦争や内戦も紛争に含まれます。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下の子どもを守る活動を世界各地で行っています。私たちは、政府軍や武装勢力などの2つ以上の勢力が、武力を用いて争い、戦闘により年間25人以上の犠牲者が出た場合を紛争と定義しています[1]

 

また、一方の勢力が、軍や武装勢力ではない一般市民の場合でも紛争の定義に含まれます。そのうち、戦闘に関連した年間死亡者数が1,000人を超える紛争を、特に「高強度紛争」としています。

紛争の原因

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シリア北西部のイドリブ県にある避難民キャンプの様子

 

なぜ紛争は起こるのでしょうか。それにはさまざまな要因があります。

 

紛争は、宗教の名のもとに引き起こされる対立や、民族や文化の違いに対する不寛容から生まれる対立によって起ることがあります。また、国境が不明確なために起こる紛争や、政権に対する不満を抱えた人々が反対運動を起こし、それが武力衝突につながることもあります。さらに、軍によるクーデターなどをきっかけに、武力行使が行われる場合もあります。大国をはじめとする外国の勢力が、何らかの政治的理由から武力行使を行い、紛争が起こるきっかけになることもあります。

 

ほかにも、鉱物や土地などを巡って争いが起こり、武力紛争に発展する場合もあります。例えば、私たちの日常に欠かせないスマートホンやパソコンは、「レアメタル」といわれる、希少な鉱物が使われています。そのため、その希少鉱物をめぐり各地で紛争が起こっています。加えて、気候変動による影響などが原因で水不足や農作物の不作が起こると、貴重な水資源や農耕地をめぐる紛争も起こります。生活ができなくなった人々が移住を余儀なくされ、移住先で対立が生まれる場合もあります。

主な紛争地域

IMG_S_CH1497286砲撃により破壊されたイエメンの民家

 

2020年現在、世界で今起こっている武力紛争の数は56にのぼります[2]。1945年以降、紛争による犠牲者数は減ってきているものの、紛争の数は最も多くなっています。そのうち、高強度紛争はアフガニスタン、シリア、ソマリア、イエメン、ナイジェリア、エチオピア、エリトリア、アゼルバイジャンでの紛争です。このうち、最も激しい紛争はアフガニスタンにおける紛争です。2020年には2万人以上が死亡したと報告されています。

 

また、ここ数十年で最も深刻な紛争の一つはシリアです。シリアでは、2011年3月から紛争続き、10年以上経った現在でも混乱が続いています。そして、多くの人たちが自宅からの避難を強いられ難民や国内避難民となり、シリアやもともと住んでいた場所に戻れていない状況です。

 

イエメンでも、他国を巻き込み激しい紛争が長期化しています。ナイジェリアでは、武装勢力が女子生徒を数百人単位で拉致するなどの事件が起きています。

紛争の問題点

IMG_S_CH1411615シリア北西部にある自宅が砲撃され負傷したマヘルさん(8歳)

 

こうした現代の紛争の特徴の一つは、非常に長期化しているということです。シリアは10年以上、イエメンは6年以上、紛争や混乱が続いています。そして、アフガニスタンでは40年も紛争が続いている状況です。紛争が長引くと、病院や学校、道路や上下水道など、生活に欠かせないインフラが破壊され、それを再建することがますます難しくなります。そして、戦闘の前線は、人が多く暮らす都市部で展開されており、子どもを含む市民の犠牲者が後を絶ちません。

子どもへの影響

IMG_S_CH1320509イラクのモスル旧市街のがれきの中で遊ぶ子ども

 

最も被害を受けるのは子どもたちです。
空爆や銃撃に巻き込まれ、命を落としたり傷を負ったりしてしまいます。また、誘拐され、子ども兵士にさせられる危険もあります。少女が兵士にさせられることもありますが、誘拐された少女の多くは、兵士の食事などの世話や兵士との結婚を強制されます。子どもたちが性暴力を受けることもあります。軍・武装勢力に連れ去られた子どもたちが、そこから逃れて家に戻ったとしても、さまざまな偏見から地域社会や家族から受け入れられないケースもあります。

 

そして、紛争が起こっている地域では、水や食料を手に入れることが難しく、子どもたちの健やかな成長に欠かせない、安全な住まいや学校、病院などが破壊されることもあります。特に教育への影響は深刻です。紛争により学校が閉鎖されたり、難民になった場合、学び続けることが難しくなったりもします。

 

学校に通えていても、その学校が兵舎や武器の保管などに使われたりすることで、敵の攻撃の対象となり、授業中に爆撃される危険が高まります。学校に兵士が駐留することで、生徒が軍に徴用されるリスクもあります。兵士による性暴力を恐れ、少女は学校に行くのを止めてしまうこともあります。

 

また、多くの子どもたちが親やきょうだいを失う経験をしています。目の前で家族が殺され、日々爆撃に怯え、深刻な精神的苦痛を感じる子どもたちも多くいます。こうしたこころの傷は、とても長い期間、子どもたちを苦しめます。そして、長引く紛争により、紛争下や難民キャンプで生まれ、そうした生活しか知らない子どもたちも増えています。難民キャンプや別の安全な場所にたどり着くまでに命を落としてしまう子どももいます。

 

こうした子どもたちに支援を届けようと、セーブ・ザ・チルドレンを含む多くの組織が活動を続けています。しかし、支援組織が国内で活動することを拒否したり、敵地とみなした地域での活動を認めたりしないなどの理由で、子どもに対する人道支援が紛争当事者により阻まれてしまうこともあります。

支援活動について

IMG_S_CH1533058シリアにある避難民キャンプで活動するケースワーカー

 

紛争により影響を受けている子どもたちやその家族に向けた支援は、さまざまな形で行われています。
食料、水などを配布するだけではなく、十分な食事もとれず栄養不良に陥った子どもがいれば治療を行い、怪我や体調を崩した子どもに対する保健医療の提供も行われています。こころに深い傷を負った子どもたちのこころのケアを行うこともとても大切です。

 

アフガニスタンやシリアでは、冬の最も寒い時期には氷点下にまで気温が下がります。体を温めるための暖房器具や防寒着もなく、靴下もはいていない子どもたちもいます。そうした冬の寒さをしのぐための毛布や衣類、雨や雪、風から住居を補強するための防水シートなども提供しています。

 

また、紛争下であっても、教育は欠かせません。紛争という緊急下の支援活動では、教育支援は後回しにされがちですが、教育の機会があることは子どもたちの今や未来の希望となります。幼くして働くことや結婚を余儀なくされる、あるいは子ども兵士になることを防ぐためにも、教育の支援は重要です。

 

加えて、紛争により親を失った子どもや避難の途中で家族と離ればなれになってしまった子どもたちを支援することも重要な支援活動です。家族や親せきなど大人と一緒でなくなってしまった子どもを人身取引や性暴力から守り、安心できるシェルターや支援物資を提供しているほか、家族との再会支援や里親の紹介なども行っています。

多くの人が紛争で苦しんでいる

紛争は、その原因を起こしたわけではない子どもたちに、最も大きな苦難を与えています。紛争の影響を受けた子どもたちは、世界で最も取り残された子どもたちといえるでしょう。

 

紛争により苦しみ、かつ世界の関心が薄れ子どもたち一人ひとりが置かれた状況が忘れられていかないよう、セーブ・ザ・チルドレンは、世界各地で可能な限り多くの支援を届けようと活動しています。紛争下であっても、誰ひとり子どもを取り残さないために、ぜひ紛争下の子どもたちへのご支援をお願いします。

IMG_S_CH1422099イエメンの学校で子どもたちと遊ぶセーブ・ザ・チルドレンのスタッフ

 

※セーブ・ザ・チルドレンは、創立100周年を記念して、「紛争下の子どもを守ろう(STOP THE WAR ON CHILDREN)」キャンペーンを展開してきました。同キャンペーンの報告書は以下からご覧ください。
■2021年11月発表の報告書『子どもに対する戦争を止める2021:兵士として利用される危機』
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=3770
■2020年2月発表の報告書『子どもに対する戦争を止める2020:ジェンダーと紛争』
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=3149
■2019年発表の報告書『子どもに対する戦争を止める:21世紀の紛争下で子どもたちを守る』
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=2887
■2018年発表の報告書『子どもに対する戦争:武力紛争下の子どもたちへの暴力を終らせる』
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=2661

 

[1] ウプサラ紛争データブログラムによる。セーブ・ザ・チルドレン『The War on Children: Time to End Violations Against Children in Armed Conflict(子どもに対する戦争-武力紛争下の子どもたちへの暴力を終らせる)』(2018年, p4)

https://www.savechildren.or.jp/scjcms/dat/img/blog/2661/1593592399342.pdf
[2] The Peace Research Institute Oslo (PRIO), “Trends in Armed Conflict, 1946–2020”, 2021

 

Written by

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン  アドボカシー室 スペシャリスト 大野容子

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン  アドボカシー室 スペシャリスト 大野容子

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