学習支援センターにてアラビア語の授業を受けるナビルさん(イエメン)

イエメンで何が起こっているのでしょうか?そして紛争とは?私たちにできる支援について

皆さんは、イエメン共和国(イエメン)で起きている人道危機について聞いたことはあるでしょうか。
イエメンでは、2015年3月から武力衝突が激化し、貧困や食料危機が拡大しました。2021年時点で、人口の66%にあたる2,070万人が支援を必要としており、そのうち54%が18歳未満の子どもです[1]。もともと住んでいた場所から国内の別の場所に逃れ、避難生活を送る国内避難民は400万人にのぼります[2]。このように多くの人たちが支援を必要としている状況であり、イエメンにおける危機は「世界最大の人道危機」といわれています[3]

イエメン・タイズ県中心部の様子▲イエメン・タイズ県中心部の様子

 

武力衝突が激化してからすでに6年が経っています。このページでは、イエメンの子どもたちが置かれている状況やセーブ・ザ・チルドレンの活動について紹介します。

 

[1] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.4

[2] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.28

[3] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.6



イエメンってどんな国

コラム用イエメン地図イエメンは、中東にある世界最大の半島・アラビア半島の南東に位置します。面積は日本の約1.5倍の約55.5万平方kmで、人口は約2,892万人(2018年)です[4]。公用語はアラビア語です。首都のサヌアにある旧市街地は、紀元前10世紀頃から存在する世界最古の街の一つといわれ、かつては「海のシルクロード」の中継地としても機能していました[5]。現在、旧市街地は、ユネスコの世界文化遺産にも登録されています。そして、耳にしたことがある人も多いかと思いますが、「モカコーヒー」というコーヒーの名前は、かつてイエメンの港町モカからコーヒー豆が積み出されたことが由来となっています[6]


[4] 外務省、イエメン共和国(Republic of Yemen)基礎データ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/yemen/data.html), 2021年4月6日閲覧

[5] 外務省、フォトギャラリー(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/staff/photo/24/0724-18.html), 2021年4月6日閲覧

[6] 外務省、外務省員の声(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/page3_000239.html), 2021年4月6日閲覧



イエメンの子どもたちが置かれている状況

長年にわたる貧困や情勢不安が続いていたイエメンでは、2015年の武力衝突の激化により全土が大規模な人道危機に陥りました。支援を必要とする子どもの数は1,130万人にのぼります[7]ここからは、イエメンの子どもたちが置かれている状況について、具体的に説明します。

 

[7] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.5

食料・栄養

イエメンでは、2021年に、人口の半数以上の1,620万人が緊急または危機的なレベルの食料不足に陥り、さらに、225万人以上の5歳未満の子どもたちと100万人以上の妊産婦が急性栄養不良になると考えられています[8]

ヌールさん(生後4ヶ月)

▲ヌールさん(生後4ヶ月)

ここで、セーブ・ザ・チルドレンが支援するタイズ県の保健医療センターに通う生後4ヶ月のヌールさんの母親の声を紹介します。ヌールさんは、重度の急性栄養不良と下痢に苦しんでいました。母親のサフィヤさんは、次のように話します。

「ミルクのボトルは、以前は3,000イエメンリアル(約1,300円)でしたが、今では4,000イエメンリアル(約1,700円)に値上がってしまい、とても私たちには買うことはできません。子どもたちは皆、病気で、希望を失っています。必需品も買うことができず、昼食をとるなら夕食はありません。子どもたちは夕食も水もとれず空腹のまま眠りにつく日もあります。紛争は終わらず、この先、私たちはどうやって生活していけばいいのか、絶望しています。」

 

[8] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.6

 

保健・医療、水・衛生

イエメンでは、10分に1人の子どもが予防可能な病気で亡くなっています[9]イエメンの保健施設のうち、完全に機能しているのは51%しかありません[10]。武力衝突の影響も大きく、2015年以降、保健施設への攻撃が169回も確認されています[11]。また、安全な飲み水やトイレなどの衛生施設が不十分で、コレラの流行にもつながりました。石けんを使うことができているのは人口の45%のみで[12]、新型コロナウイルス感染症の感染予防も十分にできない状況です。

 

[9] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.69

[10] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.69

[11] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.69

[12] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.94

教育

サアダさん(15歳)▲アデンにてセーブ・ザ・チルドレンが運営する仮設学習スペースで学ぶサアダさん(15歳)

 

イエメンにおける人道危機は、子どもたちの教育を受ける権利にも大きな影響を及ぼしており205万人の子どもたちが学校に通えていません。また、約2,500校が空爆などで破壊されたり、教育以外の目的で使用されたりしています[13]長らく通学できないことで、子どもたちの発達に深刻な影響を及ぼしています[14]

 

[13]OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.62

[14] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.63

 

子どもの保護


ハミドさん(16歳)▲タイズ県に暮らすハミドさん(16歳)

イエメンでは、子どもが児童労働や児童婚、軍への徴兵・利用、性暴力や搾取などのリスクに晒されており、こうした暴力からの支援を必要とする子どもたちは860万人にのぼります[15]また、2015年以降、1万3,000件以上の子どもに対する重大な人権侵害行為が確認されています[16]。この重大な人権侵害行為とは、子どもの軍への徴兵と利用、殺害と傷害行為、誘拐、性暴力、学校や病院への攻撃、人道支援へのアクセス拒否のことを指します。具体的には、3,256人の子どもたちが殺されたり、3,513人の子どもたちが紛争に関わる武装勢力などにより使われたり兵士として勧誘されたりしています[17]

 

[15] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.79

[16] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.79

[17] OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2021”, p.79

 

イエメンにおける支援活動

このように、イエメンの人道危機は長期にわたっており、一人ひとりの力では直接的な解決は難しいかもしれません。しかし、脆弱な状況に置かれているイエメンの子どもたちを支援する方法はいろいろとあります。たとえば、イエメンについて最新情報を知ること、そしてそれを周りの人に伝えること、さらに、人道支援を行うNGOを寄付という形で支えることなどです。セーブ・ザ・チルドレンもイエメンで活動を行っています。次からは、私たちの活動を簡単に紹介します。

セーブ・ザ・チルドレンによる活動

ナビルさん▲学習支援センターにてアラビア語の授業を受けるナビルさん

 

セーブ・ザ・チルドレンは、イエメンで一番初めに活動を開始した国際NGOで、1963年から活動を行っています。現在は、教育、子どもの保護、保健・栄養、水・衛生、食料支援など多様な分野での支援を実施しています。たとえば、教育支援に関しては、紛争の影響により学校に通うことのできない国内避難民と、国内避難民が避難している地域の子どもたちを対象に、学習支援センターを運営して代替教育を提供し、公立学校への編入を支援してきました。この学習支援センターに通学したナビルさんの声を紹介します。

 

「私の名前はナビルです。サアダ県出身です。私にはきょうだいが4人います。紛争が始まるまで、私たち家族は自分たちの家で平和に暮らしていました。しかし、その家は破壊されてしまい、私たちはアムラン県に引越ししなければならなくなりました。私はずっと医師になって人々の助けになることを夢見てきました。なかでも、保護者が医療費を支払えない子どもたちを治療したいと考えています。

 

ある夜、私たち家族が寝ているときに、家にロケット弾が落ちてきました。それは、とても恐ろしい出来事でした。家は破壊され、家族はけがをしました。翌日、両親は近隣のアムラン県ならば少しは安全に違いないと、避難を決意しました。

 

避難先のアムラン県では、私は学校に通うことができませんでした。父は職を失ってしまい、家計を支えるために、私が代わりに働かなければなりませんでした。私は、おじの衣料品店で働き、1日に1,000イエメンリアル(約430円)を稼ぎました。

 

働いていたある日、父の友人が私に、無料で教育が受けられ、学用品も提供してもらえる学校のことを教えてくれました。2年間教育を受けられていなかった私は、その話を聞いてとてもうれしくなりました。翌日、私は父とともに、ライダ地区にあるその学校に登録に行きました。学校の人たちは私を歓迎してくれ、制服やかばん、筆記用具、ノート、そして米や油、砂糖、豆の缶詰、塩が入ったフードバスケットを提供してくれました。

 

楽しく学校に通ううちに、私の成績は日に日に良くなっていきました。分からないところがあると、先生はいつも私が理解できるようになるまで教えてくれます。好きな科目は算数で、難しい問題を解くのが大好きです。

 

今では、医師になる夢をかなえられるはずだと、希望を持てるようになり、明るい未来を描けるようになりました。紛争による影響を受けた子どもたちを治療できるようになりたいです。私は、教育を続けられるように支援をしてくれたセーブ・ザ・チルドレンに、とても感謝しています」

 

あなたにできること

シュラさん(15歳▲ラヒジュ県の仮設避難所で暮らすブシュラさん(15歳)


このページでは、イエメンの子どもたちの状況を中心に紹介しました。2015年の武力衝突の激化から6年が経ち、今も支援を必要とする子どもたちが多くいます。セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもたちの生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」が保障されるよう活動を継続します。イエメンの情勢は刻一刻と変化しています。ここで紹介した内容をきっかけに、イエメンの子どもたちが置かれている状況について関心をもち、また、セーブ・ザ・チルドレンの活動へのご支援をお願いします。


Written by

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 海外事業部 プログラム・コーディネーター  渡邊紗世

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 海外事業部 プログラム・コーディネーター  渡邊紗世

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